【介護転職とセクハラ】28.4%の衝撃…現場のセクハラ実態は?具体的な事例と被害後の対応策

介護職への転職を検討している方の中で、「セクハラ」について意識している人は、意外に少ないかもしれません。しかし、介護職員のセクシュアルハラスメント被害は、厚生労働省の調査でも明らかになっている深刻な問題です。過去3年間で訪問介護事業所の28.4%がセクハラの発生を把握しており、本記事では、介護現場で実際に起きているセクハラの具体的事例と、被害後の対応策について、確実な情報に基づいて解説します。
介護現場でのセクハラの現状
ここからは、セクハラの現状についてまず見ていきましょう。
セクハラ被害の統計的実態
公益社団法人日本介護福祉士会の調査によると、セクシュアルハラスメントの被害を受けた介護職員の約98%が、加害者は「利用者」と回答しています。一部の事例では利用者の家族がセクハラの加害者になることもありますが、圧倒的多数は利用者からの被害です。
厚生労働省と公益財団法人介護労働安定センターの『介護労働者が過去1年間に受けた利用者からのセクハラ・暴力等の経験』調査では、以下の結果が報告されています。
過去3年間でセクシュアルハラスメントの発生を把握している事業所は、居宅介護支援事業所で7.1%、訪問介護事業所で28.4%となっており、訪問介護の現場でセクハラ被害がより頻繁に発生していることが示唆されています。
また、令和5年度の調査では、利用者からセクハラを受けた介護職員の割合について、職種別では看護職員の11.5%に対し、介護職員全体では「セクハラ(性的嫌がらせ)」が一定の割合で報告されており、この問題の深刻さが明らかになっています。
介護現場で実際に起きているセクハラの具体的事例
ここからは、より具体的な事例について見ていきましょう。
事例1:身体への不適切な接触
状況: 訪問介護で30代の女性ヘルパーが、70代の男性利用者のトイレ介助を行った際、トイレで利用者から手やわき腹を触られました。サービス開始当初にも、入浴介助中に女性職員が利用者から身体を触られたことがありました。
対応: ヘルパーはその場で「やめてください」と明確に伝えました。利用者は指摘後、触るのをやめました。事業所の報告プロセスにより、管理者に報告され、以降は男性職員による対応を基本とする配置変更が行われました。
ポイント: 身体への接触は、最も一般的なセクハラ形態です。日本介護福祉士会の調査では、「手や肩に触れる、抱きつくなど不必要な身体への接触」がセクハラの75.9%を占めています。
事例2:性的な言語的暴力
状況: 施設入所者の男性が、数日間にわたって女性職員に対し、下ネタを含む性的な発言を繰り返しました。職員はその度に「そういう話はやめてください」と注意していましたが、利用者は聞き入りません。
対応: 施設の管理者が地域包括支援センターに相談し、担当者会議(利用者、家族、管理者、ケアマネジャー、地域包括支援センター職員が参加)を開催。管理者が具体的な発言内容を記録に基づいて示した上で、「ハラスメント行為が続けば、サービスの継続が難しくなる」と明確に説明しました。
その後、性的発言の過激さが緩和され、回数も減少しました。
ポイント: 性的な冗談やからかい発言は、セクハラの66.7%を占める一般的な形態です。言葉の暴力は身体への接触がない分、職員が「職業上の忍耐」と自己評価してしまい、報告されないケースが多い傾向にあります。
事例3:性的暴力に至る極端なケース
状況: 訪問介護中に、利用者が「下着も脱がせてください」と女性ヘルパーに指示。ヘルパーが仕方なく従ったところ、突然利用者に下半身を押し付けられました。ヘルパーは悲鳴を上げて廊下に飛び出し、近くにいた男性ヘルパーに泣きながら助けを求めました。
対応と結果: 事業者側は報告を受けて事実確認に当たりました。利用者は「意識が朦朧としていて覚えていない」と述べ、謝罪を申し出ました。以降、その女性職員はこの利用者の対応から外され、当該利用者には男性職員のみが担当するよう変更されました。
ポイント: このようなケースは、セクハラが単なる言葉や軽い接触にとどまらず、明らかな犯罪的行為に達する可能性を示しています。このレベルの被害に至った場合、職員本人の心理的トラウマは極めて深刻です。
事例4:力ずくでの抱きしめと性的接触
状況: 医療法人運営の賃貸住宅で訪問介護に出向いた30代のヘルパーが、脳梗塞の後遺症で療養中の70代男性から被害を受けました。ヘルパーが「上体を起こしたいから手を貸して」という依頼に応じて手を握ったところ、逆に強い力で引き寄せられ、要介護者の体の上に抱き抱えられました。その後、下半身を撫で回され、頬や耳やうなじにキスされました。
対応: ヘルパーが大声で「何するんですか。いいがかげんにしてください!」と毅然として対抗した結果、利用者はやめました。利用者は「冗談冗談」と笑いながら対応しましたが、事業者側は家族に連絡し、「次回同様の事が起きた場合には、退去いただく」と通達しました。
ポイント: 利用者が「冗談だ」と言い張るケースが多いのですが、職員にとっては深刻な被害です。認知症や脳疾患による行動異変が背景にあっても、職員の身体と心理が侵害されたという事実は変わりません。
セクハラの背景にある要因
介護現場でセクハラが多い理由には、いくつかの構造的要因があります。認知症や精神疾患を抱える利用者の場合、行動異変として性的行動が顕在化することがあります。一部の利用者家族が、介護職の性別や年齢を理由にした不適切な要求をすることもあります。そして最も重要なのは、職員が「利用者だから」「認知症だから」という理由で被害を自己抑圧しやすい職場文化です。
割合 |
具体例 |
|
|---|---|---|
身体への不適切接触 |
75.9% |
手を握られる、抱きつく、撫でられる |
性的な言語表現 |
66.7% |
下ネタ、不適切な冗談、からかい |
その他暴力的行為 |
— |
抱きしめ、性器の露出・接触 |
セクハラを受けた場合の対応策
セクハラを受けた際は、毅然とした対応が必要です。具体的な方法についてご紹介します。
第一段階:その場での対応
セクハラを受けたとき、最初の対応が後の対処を左右します。可能な限り、その場で明確に「それは不適切です。やめてください」と伝えることが重要です。これにより、利用者が行為の不適切性を認識する可能性が高まります。
ただし、人身への危険を感じた場合は、無理に対抗せず、その場から離脱することを優先してください。自分の安全が最優先です。
第二段階:職場への報告
被害を受けた場合、その日のうちに管理者や生活相談員に報告することが重要です。多くの介護職は「利用者だから仕方ない」「自分の対応が悪かったのかもしれない」と自責してしまい、報告をためらいます。しかし、報告を遅延させることは、同じ被害が他の職員に及ぶ可能性を高めてしまいます。
報告時には、「いつ、どこで、何をされたか、どのような言葉を投げかけられたか」を記録して伝えます。これにより、施設側が具体的な対応を検討できるようになります。
第三段階:施設による対応
セクハラの報告を受けた施設側の責務は、厚生労働省の指針に基づいて明確に定義されています。施設は以下の対応を取るべきです。
利用者への指導:セクハラが発覚した場合、セクハラ行為の禁止について明確に指導すること。担当者会議を開いて、利用者と家族に対し、具体的な事例を示した上で、行為が介護契約の継続要件に影響することを説明すること。
職員の配置変更:被害職員の心理的負担を軽減するため、必要に応じて対象利用者との関わりから職員を外すこと。これはセクハラの再発防止にも機能します。
利用者の配置変更:場合によっては、利用者を別の施設に転出してもらう、または施設サービスの利用を停止することも視野に入ります。
記録と再発防止:施設は セクハラの事実を記録し、全職員に対して教育を実施し、同様のトラブルを予防することが法的義務です。
第四段階:外部機関への相談
施設内での対応が適切でない場合、または職場での報告が困難な場合は、外部機関への相談を検討します。以下の相談窓口が利用可能です。
都道府県の労働局:職場のハラスメント問題に関する相談窓口。セクハラを含めたハラスメント全般に対応します。相談は無料で、匿名での相談も可能です。
地域の地域包括支援センター:介護サービスに関する相談窓口。セクハラ問題の報告と対応支援を実施します。
警察への通報:セクハラが刑事犯罪に該当する場合(強制わいせつ罪など)、警察に通報することも検討の対象になります。
セクハラから身を守るための転職前の確認
セクハラ被害を減らすためには、転職時点での職場選択が重要です。以下を確認しましょう。
セクハラ対策の明文化:施設のウェブサイトや重要事項説明書に、セクハラ対策が記載されているか確認。「セクハラが発覚した場合、利用者のサービス利用を停止する」という明確な方針があるかを確認します。
職員教育の実施:見学や面接時に、「ハラスメント対策研修を実施しているか」「被害報告後の対応フローが決まっているか」を質問します。これらに明確に答えられない施設は、対策が不十分な可能性があります。
女性職員の配置と満足度:施設に女性職員がどの程度いるか、また長く勤続している職員がいるかを観察します。女性職員の離職が多い施設は、セクハラ対策が不十分な可能性があります。
おわりに
介護現場でのセクハラは、「利用者だから仕方ない」「認知症だから仕方ない」という言い訳で、これまで長年放置されてきました。しかし、厚生労働省の指針とパワハラ・セクハラ対策の介護報酬加算により、セクハラ対策は施設運営の法的責務となっています。
セクハラを受けた介護職員のうち、仕事を辞めたいと考える人、また実際に退職する人が存在しており、セクハラは単なる不快感の問題ではなく、介護職の離職率を高める重大要因です。
転職時に「この施設はセクハラ対策をしているか」を確認し、被害を受けた場合は躊躇なく報告する。そして何より、セクハラを我慢する必要は一切ないことを認識することが、介護職のキャリアを長く続けるための必須条件なのです。
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