【介護転職ストーリー】「厨房からケアの現場へ」30歳男性、飲食業で培った“もてなし”が活きる仕事

さまざまな人々の介護転職への道のりをご紹介する「介護転職ストーリー」。第14回目は、30歳男性の挑戦です。

• S.J.さん
• 現在の年齢：30歳
• 現在の職業：介護職員（デイサービス勤務）
• 趣味：スパイスカレー作り、スケッチ旅行

「“おいしい”で人を笑顔にするのが自分の役目だと思っていました」
そう話すS.J.さん。大学卒業後、7年間飲食の現場でもてなす日々を送った彼が、全く未経験だった介護業界に自ら飛び込むことを決意した理由とは――。それは、ただ“味”を届けるだけでなく、“人生そのもの”を支えるやりがいに惹かれたからでした。

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生い立ち～料理と「人の笑顔」が原動力

熊本市生まれのS.J.さん。調理師だった祖父の影響で、幼いころから台所で手伝いをするのが大好きでした。「将来は飲食の仕事を」と自然に思うようになり、高校卒業後は地元イタリアンレストランに見習いとして就職。その後、福岡市の人気ビストロへ移るなど、経験を重ねます。

お客さんから「このパスタ、最高！また来ます」と声をかけられると、疲れも吹き飛びました。忙しいながらも、刺激と達成感にあふれる日々。「飲食はハードだけど、楽しい仕事ですよ」と、当時を振り返ります。

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コロナ禍と転機。「もてなし」を続けたい気持ちの行き先

しかし、コロナ禍をきっかけに状況は一変。緊急事態宣言で休業や時短が繰り返され、店は経営難に。「明日も営業できるか分からない不安と、バイトの子たちの生活も心配で……」
1日も休まず働き続けてきたS.J.さんも、自分の将来に初めて強い不安を感じました。

そんなある日、母親から「近所のデイサービスで調理スタッフの募集があるみたいよ」と何気なく告げられます。「飲食からなら、資格なしでも応募できるんじゃない？」
―この一言が転機になりました。

施設見学を申し込んだS.J.さんは、明るくおしゃべりを楽しみながら食事を取るお年寄りたちの姿と、職員の温かい対応に心を動かされました。「厨房の外でも“誰かを元気にする”って、こういう仕事なんだ――」

飲食の経験がそのまま活かせるだけでなく、“人を支えたい”という想いの行き先が、くっきり見えた瞬間でした。

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現在――「人生を味わう時間」を支える

S.J.さんは無資格から、厨房スタッフとしてデイサービスに入職。その後、介護職員初任者研修を修了し、今はフロア業務と調理の二足のわらじで奮闘しています。

調理の仕事では、利用者さんひとり一人の噛む力や飲み込みやすさにも配慮しながら献立をアレンジ。「小鉢を高齢者向けのミニチュアコースにしたら、食が細くなった方が“今日はお祭りみたいやね！”と大笑いしてくださって……この瞬間がたまらなく嬉しいんです」

介護業務では、「食事介助をしながら“昔の郷土料理”の話で盛り上がったり、自分の得意だった“おもてなしの会話術”が活きている」と感じるそう。

【重要ポイント】

• 「飲食経験＝コミュニケーション力・観察力が武器になる」
• 「人生の最終章にも、“おいしい”と感じる瞬間を届けられる」
• 「職種は変わっても、根っこは“誰かの笑顔”のために働いていることには変わりない」

将来は、介護食アドバイザーの資格取得や、ご当地レシピを取り入れたケア食メニューの提案にも挑戦したいというS.J.さん。「厨房で感じていた“自分の存在意義”を、今は介護の現場で毎日実感している」
“転職してよかった”。彼はこれからも、人生を味わわせる“本当のおもてなし”のあり方を探し続けていきます。

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