【介護転職ストーリー】元バスガイド52歳「おもてなし」のプロが見つけた、第二の舞台

さまざまな人々の介護転職への道のりをご紹介する「介護転職ストーリー」。第5回目は、52歳元バスガイドの挑戦です。

名前：M.H.さん
年齢：52歳
職業：介護職員（デイサービス勤務）
趣味：温泉めぐり、地域の歴史散策

生い立ち～バスガイドとして駆け抜けた30年

日本有数の温泉地、大分県別府市で生まれ育ったM.H.さん。地元の歴史や文化が大好きで、「この街の魅力を、たくさんの人に伝えたい」と、高校卒業後に観光バス会社に就職。バスガイドとして、30年以上にわたりマイクを握り続けました。

50歳の崖っぷち。失われた日常と、母の介護

順風満帆だった彼女の人生は、50歳を前に一変します。新型コロナウイルスの影響で、観光客は激減。M.H.さんの仕事は、ほとんどなくなってしまいました。

追い打ちをかけるように、離れて暮らす母親が体調を崩し、介護が必要な状態に。仕事への不安と、母親の介護という二つの重圧が、彼女の肩にのしかかります。慣れない介護に戸惑い、母親にきつく当たってしまうこともありました。そんな時、自宅を訪れた訪問介護員の姿が、彼女の目に焼き付きます。

その介護員は、手際よく母親の体を拭きながら、優しく語りかけていました。

「お母さん、お背中きれいになりましたよ。気持ちいいでしょう。今日の昼ごはんは、お母さんの好きな煮魚にしましょうね」

そのプロフェッショナルな姿と、母親の安堵した表情を見て、M.H.さんはハッとしました。

【重要ポイント】
M.H.さんの転機は、「喪失」と「出会い」でした。長年築いたキャリアを失った絶望の中で、プロの介護職という「人を支える専門家」の姿に出会ったのです。それは、彼女が「おもてなし」の仕事で培ってきたスキルが、形を変えて活かせるかもしれないという、一筋の光でした。

「おもてなし」の心を、介護の力に

「私にも、できることがあるかもしれない」。

M.H.さんは、まるで新しい観光ルートを覚えるかのように、介護の世界を猛勉強しました。ハローワークの支援制度を利用し、介護職員初任者研修を修了。数ある介護施設の中から、彼女が選んだのは、地域密着型のデイサービスでした。

面接で、彼女は正直に自分の想いを伝えました。

その熱意が伝わり、彼女は51歳で介護職員として第二の人生をスタートさせました。

現在：バスガイドから、人生の”ツアーコンダクター”へ

現在、M.H.さんはデイサービスのムードメーカーとして、なくてはならない存在になっています。彼女のレクリエーションは、まるでバスツアーのようだと評判です。

「はい、みなさん！今日は頭の中で、昭和30年代の別府温泉めぐりに出発しますよ！右手に見えますのが…」

昔の別府の写真や音楽を使い、巧みな話術で利用者さんを”思い出旅行”へといざなう。すると、普段は無口な方も、懐かしそうに昔話を始めてくれるのです。

利用者さんからは「M.H.さんのデイサービスに来るのが、一番の楽しみ」「あんたの話は、昔を思い出して元気が出るわい」という声が絶えません。

30年間、観光客を乗せて走ったバス。今は、利用者さんの笑顔を乗せて、日々の生活を彩る。舞台は変わっても、彼女の「おもてなし」の心は、変わらず輝き続けています。

M.H.さんの物語は、どんな経験も、どんな年齢も、新しい挑戦の妨げにはならないことを力強く教えてくれます。人生のハンドルを握り直す勇気さえあれば、景色はいつでも変えられるのです。

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