【介護転職ストーリー】「この体型だから、できることがある」コンプレックスを“強み”に変えた25歳の挑戦

さまざまな人々の介護転職への道のりをご紹介する「介護転職ストーリー」。第13回目は、25歳女性の挑戦です。
- Y.K.さん
- 現在の年齢:25歳
- 現在の職業:介護職員(訪問介護事業所 勤務)
- 趣味:料理(作り置きおかず)、動物の動画鑑賞
「ずっと、自分の体型が嫌いでした」。そう話すY.K.さんの声は、今では明るい自信に満ちています。学生時代から続く体型へのコンプレックス。しかし、介護という仕事に出会ったことで、彼女は自分の身体を全く新しい視点で見つめ直すことになります。これは、一人の女性が長年のコンプレックスを乗り越え、自分だけの「価値」を見出すまでの物語です。
生い立ち~「痩せなきゃ」と自分を責め続けた日々
鹿児島県でのびのびと育ったY.K.さん。しかし、物心ついた頃から、ぽっちゃりとした自分の体型がコンプレックスでした。思春期になると、友人たちの何気ない一言や、雑誌に載っているスリムなモデルの姿に、深く傷つくようになります。
「なんで私は、みんなみたいに可愛くなれないんだろう」
短大時代は、食事制限や過度な運動など、様々なダイエットに挑戦しては挫折する繰り返し。アパレルショップの店員に憧れるも、「こんな体型じゃ、お客様の前に立てない」と諦め、卒業後は地元の食品工場で検品のパートとして働き始めます。黙々とベルトコンベアを流れる製品をチェックする毎日。人と話すことも少なく、自分の殻に閉じこもるような日々でした。

「痩せていない自分には価値がない。ずっと、そう思い込んでいました。鏡を見るたびにため息が出て、どんどん自信をなくしていきました」
きっかけは、ハローワークで見た一枚の求人票
24歳の誕生日を迎えた日、彼女はふと思いました。「このまま、自分を嫌いなままで一生を終えるんだろうか」。何かを変えたい一心で、彼女はハローワークの扉を叩きます。そこで偶然目にしたのが、訪問介護事業所の求人でした。
【求める人材:体力に自信のある方、大歓迎!】
その一文に、彼女の目は釘付けになりました。体力には、昔から自信があったのです。学生時代の体力測定ではいつも上位だったし、重い荷物を持つのも苦ではなかった。
「私にも、できることがあるかもしれない…」
藁にもすがる思いで、彼女は事業所の見学に申し込みます。そこで出会ったのは、小柄ながらもテキパキと働く先輩ヘルパーと、その方を心から頼りにしている利用者の姿でした。そして、所長からかけられた言葉が、彼女の心を大きく動かします。

「介護の仕事はね、華奢な体じゃ務まらないこともあるのよ。人を支えるには、自分自身がしっかり立っていないと。あなたのその身体は、利用者さんにとっては『安心感』に繋がる立派な武器になるかもしれないわ」
「武器」―。今までずっと、忌み嫌ってきた自分の身体が、誰かの役に立つ「武器」になる。その言葉は、Y.K.さんにとって衝撃でした。
【重要ポイント】
長年のコンプレックスだった体型を、第三者から「強み」として肯定されたこと。その一言が、彼女の自己肯定感を根底から覆し、新たな一歩を踏み出す勇気を与えました。
現在:コンプレックスが「安心感」という強みに変わった
介護職員初任者研修を修了したY.K.さんは、現在、訪問介護ヘルパーとして働いています。主に担当するのは、体格の大きな男性利用者の入浴介助や、ベッドから車椅子への移乗など、特に力が必要なケースです。

「先輩たちから『Y.K.さんが来てくれると助かる!』って言われるんです。それに、利用者さんからも『あんたは力が強かけん、安心して体を預けられる』って言ってもらえて。今までずっと嫌いだった自分の身体を、初めて『ありがとう』って思えました」
もちろん、大変なこともあります。利用者さんの自宅というプライベートな空間での仕事は、気遣いの連続です。しかし、工場で働いていた頃のような孤独感は一切ありません。「ありがとう」「助かったよ」という直接の言葉が、彼女の何よりの原動力になっています。
休日は、得意の料理で作り置きのおかずをたくさん作るのが楽しみ。利用者さんとの会話で出た「昔、お母さんが作ってくれた煮物が食べたい」という一言をヒントに、次の訪問で差し入れすることもあるそうです。
「まだ、自分の体型が完全に好きになったわけではありません。でも」と彼女は続けます。
「この身体だからこそ、できる仕事がある。この身体だからこそ、与えられる安心感がある。そう思えるようになったんです」。
コンプレックスを完全に消し去ることは難しいかもしれません。しかし、それを乗り越えるのではなく、「強み」として受け入れ、誰かのために活かす。Y.K.さんの挑戦は、自分自身を愛するための一つの答えを、私たちに示してくれているようです。
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